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個人事業主の手取りは売上の何割か——売上から手取りまでの構造を段階表で解説

個人事業主・フリーランスの手取りは売上の何割になるのか。売上→経費→青色申告特別控除→所得控除→所得税・住民税・個人事業税・消費税という流れを段階表で整理し、売上400万・600万・1,000万円の手取り目安を2026年度時点の制度で概算します。

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結論:手取りは売上の5〜6割。決めるのは「経費率・控除・国保」

「個人事業主の手取りは売上の何割か」への短い答えは、経費率25%前後の事業なら売上の5〜6割です。本記事の概算(後述の前提)では次のようになります。

年間売上手取り目安手取り率
400万円約239万円約60%
600万円約344万円約57%
1,000万円約499万円約50%

売上が増えるほど手取り率が下がるのは、所得税が累進税率(5〜45%)であることに加え、国民健康保険料と個人事業税が所得に比例して増え、売上1,000万円クラスでは消費税の納税も現実になるためです。

ただしこの割合は、経費率国民健康保険料、そして所得控除をどれだけ使うかで大きく動きます。だからこそ「何割」と暗記するのではなく、売上から手取りまでの構造を知り、自分の数字で計算できるようになることが重要です。自分のケースは個人事業主 手取り・所得控除シミュレーターで概算できます。

売上から手取りまでの7ステップ(段階表)

個人事業主の手取りは、次の階段を上から順に降りて決まります。

ステップ差し引くものポイント
① 年間売上会社員の「年収」とは別物
② −必要経費仕入・家賃・通信費など経営セーフティ共済の掛金もここ(必要経費)
③ −青色申告特別控除最大65万円ここまでで事業所得が確定
④ −所得控除基礎控除、社会保険料控除、iDeCo、小規模企業共済などここまでで課税所得が確定
⑤ 所得税・住民税課税所得×税率所得税5〜45%+復興特別所得税、住民税約10%
⑥ 個人事業税・消費税別ルートで計算事業税は290万円控除後に3〜5%、消費税はインボイス登録の有無次第
⑦ 手取り売上−経費−社会保険料−税金国民年金・国保の支払いも忘れずに引く

重要なのは、⑤の所得税・住民税と⑥の個人事業税・消費税は計算のベースが違うことです。個人事業税には青色申告特別控除が効かず、消費税はそもそも利益ではなく売上(課税売上)ベースで動きます。以下、各ステップを見ていきます。

ステップ②③:経費と青色申告特別控除

必要経費は事業に直接必要な支出です。自宅兼事務所の家賃・光熱費は事業使用分だけを按分計上します。なお経営セーフティ共済(倒産防止共済)の掛金(月5,000円〜20万円、積立上限800万円)は、所得控除ではなく必要経費としてこの段階で引きます。解約手当金は受け取ったときに収入になるため、「節税」ではなく課税の繰り延べである点に注意が必要です。

青色申告特別控除は帳簿の付け方と申告方法で3段階に分かれます(国税庁タックスアンサーNo.2072)。

控除額条件
65万円55万円の要件+「e-Taxによる申告」または「優良な電子帳簿保存」
55万円複式簿記で記帳し、貸借対照表・損益計算書を添付して期限内に申告
10万円上記を満たさない青色申告者(簡易な記帳など)

会計ソフトを使って複式簿記で記帳し、e-Taxで申告すれば65万円に届きます。65万円と10万円の差55万円は、所得税・住民税・国保を合わせた実効負担率が30%なら年約16万円の手取り差になります。

ステップ④:所得控除——2026年分の基礎控除は最大104万円

事業所得から所得控除を引いたものが課税所得です。個人事業主が使う主な所得控除は次の通りです。

基礎控除(2025年税制改正で大きく変更)

2025年・2026年の税制改正で、所得税の基礎控除は従来の48万円から大幅に引き上げられました。**令和8年分(2026年分)**の所得税の基礎控除は次の通りです(国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」)。

合計所得金額基礎控除額(令和8年分・9年分)
489万円以下104万円
489万円超〜655万円以下67万円
655万円超〜2,350万円以下62万円

令和10年分以後は本則に戻り、合計所得132万円以下が99万円、それ以外(2,350万円以下)が62万円となる予定です。一方、住民税の基礎控除は43万円のまま変わっていません。所得税と住民税で控除額が違う点は、後述のシミュレーションでも効いてきます。

社会保険料控除(国民年金・国保)

  • 国民年金:令和8年度の保険料は**月17,920円(年約21.5万円)**の定額です(日本年金機構)。全額が社会保険料控除になります。
  • 国民健康保険:保険料は自治体ごとに異なりますが、粗い目安は「(所得−43万円)×10%前後+均等割」です。令和8年度からは子ども・子育て支援金分が加わって4区分になり、賦課限度額は年間113万円(医療67万+支援金26万+介護17万+子育て支援3万)に引き上げられています。支払った国保保険料も全額が社会保険料控除になります。

iDeCo・小規模企業共済(任意で上乗せできる控除)

  • iDeCo:国民年金第1号被保険者(自営業者等)の掛金上限は**月6.8万円(年81.6万円)**で、国民年金基金・付加保険料との合算枠です。2027年1月からは月7.5万円に引き上げられる予定です。仕組みと出口の注意点はiDeCo完全ガイドにまとめています。
  • 小規模企業共済:個人事業主の「退職金」を自分で積み立てる制度で、掛金は月1,000円〜7万円(年最大84万円)、全額が小規模企業共済等掛金控除になります。受け取り時は退職所得または公的年金等の扱いになるため、出口の税金は退職金の一時金・年金の受け取り方と同じ論点で考えます。

iDeCoと小規模企業共済を満額使うと年165.6万円の所得控除になり、限界税率30%(所得税10%+住民税10%+国保10%の帯)なら年約50万円、負担が軽くなる計算です。ただしどちらも資金が長期間ロックされる点は織り込む必要があります。

ステップ⑤⑥:4つの税金

所得税(累進5〜45%+復興特別所得税)

課税所得に速算表の税率がかかり、算出額に**復興特別所得税2.1%**が上乗せされます(国税庁タックスアンサーNo.2260)。

課税所得税率控除額
195万円以下5%0円
195万円超〜330万円以下10%97,500円
330万円超〜695万円以下20%427,500円
695万円超〜900万円以下23%636,000円

(900万円超は33〜45%)

住民税(約10%)

前年の所得をベースに、所得割約10%+均等割・森林環境税(合計5,000円前後)がかかります。基礎控除は43万円です。前年ベースなので、独立1年目は安く、廃業・所得減の翌年に重くのしかかる点は資金繰り上の注意点です。

個人事業税(290万円控除後に3〜5%)

法定業種に対して都道府県が課す税で、事業主控除290万円を引いた後の所得に3〜5%(多くの業種は5%)がかかります(東京都主税局)。ここには青色申告特別控除が適用されないため、「所得税はゼロなのに事業税は出る」ことがあり得ます。事業所得290万円以下なら課されません。

消費税(インボイスと2割特例・3割特例)

基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下なら本来は免税事業者ですが、インボイス(適格請求書)発行事業者に登録すると課税事業者になります。免税事業者から登録した小規模事業者には、納付額を売上税額の2割にできる2割特例がありますが、これは個人事業者は令和8年分(2026年分)の申告が最後です。令和8年度税制改正で、令和9年分・10年分は納付額を売上税額の3割とする個人事業者向けの経過措置(いわゆる3割特例)が設けられています。その後は簡易課税(サービス業ならみなし仕入率50%=納付は売上税額の約5割)か本則課税を選ぶことになります。

目安ケース:売上400万・600万・1,000万円

以上を通しで計算した目安が次の表です。前提:経費率25%、青色申告特別控除65万円、単身・40〜64歳、国保は(事業所得−43万円)×10%の目安(均等割込みの粗い近似)、iDeCo・小規模企業共済は未加入、令和8年分(2026年分)の基礎控除を適用、売上1,000万円のケースのみインボイス登録済みで2割特例を適用。

項目売上400万円売上600万円売上1,000万円
必要経費(25%)100万円150万円250万円
青色申告特別控除65万円65万円65万円
事業所得235万円385万円685万円
国民年金21.5万円21.5万円21.5万円
国保(目安)19.2万円34.2万円64.2万円
所得税(復興税込)4.6万円13.0万円66.1万円
住民税15.6万円29.1万円56.1万円
個人事業税0.5万円8.0万円23.0万円
消費税0円(免税)0円(免税)20.0万円(2割特例)
手取り約239万円約344万円約499万円
手取り率(対売上)約60%約57%約50%

読み方のポイントは3つです。

  1. 税金より社会保険料が先に効く。売上400万円では所得税4.6万円に対し、年金+国保が40.7万円。低〜中所得帯の負担の主役は税ではなく社会保険料です。
  2. 売上1,000万円では基礎控除が62万円に縮む。合計所得655万円を超えると2026年分の基礎控除は104万円→62万円に下がり、税率も20%帯に入るため、手取り率が一段下がります。
  3. 消費税が「第4の負担」として登場する。インボイス登録をしていると、2割特例でも売上1,000万円で約20万円。特例終了後はさらに増えます。

前提を1つ動かすだけで結果は大きく変わります。経費率・国保料率・iDeCo・小規模企業共済・消費税方式を自分の条件に合わせて、個人事業主 手取り・所得控除シミュレーターで確かめてみてください。所得控除を増やしたときの節税効果の目安も同時に表示されます。

会社員との違い:社会保険は「全額自己負担で、保障は薄い」

「売上600万円の個人事業主」と「年収600万円の会社員」は、手取りも保障もまったく別物です。

項目個人事業主会社員
年金国民年金のみ(定額・月17,920円)厚生年金(報酬比例・会社が半分負担
医療保険国民健康保険(全額自己負担)健康保険(会社が半分負担)
傷病手当金・出産手当金原則なしあり
雇用保険・労災保険原則なしあり
退職金・老後の上乗せ自分で用意(小規模企業共済・iDeCo等)会社の退職金・企業年金がある場合も
経費・控除の自由度高い(経費計上・青色控除・各種共済)低い(給与所得控除は自動)

会社員は保険料の半分を会社が負担し、将来の厚生年金も手厚い一方、個人事業主は保険料が全額自己負担のうえ、将来の年金は基礎年金だけです。その代わりに経費計上と控除の自由度が高いので、小規模企業共済やiDeCoで「会社が用意してくれない保障を、控除を使って自分で作る」のが定石になります。収入の柱を給与以外にどう作るかという視点は年収より「給与外比率」がFIREを決めるでも扱っています。

注意点:この概算が外れやすいところ

  • 国民健康保険料の自治体差。同じ所得でも自治体によって年数万〜十数万円単位で違います。「10%」はあくまで目安で、正確には自治体の料率表(均等割・平等割を含む)で計算が必要です。
  • 家族構成。配偶者控除・扶養控除、国保の均等割は世帯人数で変わります。本記事の概算は単身前提です。
  • 住民税・事業税は後から来る。どちらも前年所得ベースの後払いです。手取り率の計算上は同じでも、資金繰りとしては翌年に備えた積み立てが必要です。
  • 消費税の前提。概算では税込売上と納付額の関係を単純化しています。本則課税や簡易課税の事業区分によって納付額は変わります。
  • 制度は動く。基礎控除は令和8・9年分の特例額であり、令和10年分以後は物価に応じた見直しが予定されています。iDeCoの上限も2027年1月に変わります。数値は「2026年度時点」として読んでください。

まとめ:割合を暗記せず、構造で計算できるようになる

  • 手取りの目安は売上の5〜6割。売上が増えるほど累進課税・国保・消費税で手取り率は下がる
  • 順番は「売上→経費→青色控除65万円→所得控除→所得税・住民税」+別ルートの「個人事業税・消費税」
  • 2026年分の基礎控除は最大104万円に引き上げ。ただし住民税は43万円のまま
  • 低〜中所得帯の負担の主役は税金ではなく国民年金+国保
  • iDeCo(年81.6万円)と小規模企業共済(年84万円)は、個人事業主が自分で作れる最大級の控除

まずは個人事業主 手取り・所得控除シミュレーターに自分の売上と経費を入れて、現状の手取り率を把握するところから始めてください。そのうえで「経費率が5%変わったら」「小規模企業共済に月3万円入れたら」と条件を動かすと、自分の事業の手取りがどの変数に敏感なのかが見えてきます。


出典源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月):国税庁No.2072 青色申告特別控除:国税庁No.2260 所得税の税率:国税庁国民年金保険料:日本年金機構2割特例の概要:国税庁個人事業税:東京都主税局小規模企業共済 制度の概要:中小機構経営セーフティ共済 制度の概要:中小機構

Primary sources

一次情報・参考リンク

About the author
Toshi Time編集部

世界のランキングを出典と選定方法から、新NISA・iDeCo・配当・年金を制度と税引後キャッシュフローから整理します。※金融商品取引業の登録はなく、個別銘柄の推奨や投資助言は行いません。

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