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退職金は一時金と年金、どっちで受け取る?税金から考える初心者ガイド

退職金を一時金で受け取るか年金形式で受け取るかは、退職所得控除、公的年金等控除、社会保険料、家計のキャッシュフローで答えが変わります。基本の数字と2026年改正の論点を初心者向けに整理します。

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まず、なぜ「受け取り方」で税金が変わるのか

会社員として長く働いた退職金は、まとまった金額になります。受け取り方は会社の規定にもよりますが、大きく分けて二通りあります。

  • 一時金として一括で受け取る
  • 年金形式で何年かに分けて受け取る

この二つは、税金の計算式そのものが違います。だから「どっちが手取りが多いか」は、単純に総額を比べてもわかりません。家計の側で見ると、お金が一度に入るのか、毎年少しずつ入るのかでも、生活設計は変わります。

「会社が決めるから自分で選べないでしょ」と思われるかもしれません。けれど近年は、一時金と年金の併用、受給開始時期の選択など、自由度のある制度を持つ会社が増えています。何も選ばないのと、仕組みを知って選ぶのではその後の資産形成において大きな違いが生じます。

一時金で受け取る場合の税金

退職金を一時金で受け取ると、税法上は「退職所得」として扱われます。退職所得には、給料の所得とは別の優遇された計算ルールがあります。詳しくは国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき」を参照してください。

ポイントは2つです。

  1. 退職所得控除で大きな金額が非課税枠として差し引かれる
  2. 残った金額の2分の1だけが課税対象になる(原則)

退職所得控除の計算は次のとおりです。

40万円/年
勤続20年以下
最低80万円は保証されます
70万円/年
20年を超える部分
長く勤めるほど枠が大きい
×1/2
残額の課税
控除を引いた残りに適用
分離課税
他の所得と分けて計算
給与所得と合算されない
数値は一般的な制度説明です。役員退職金や勤続5年以下の短期退職手当等など、扱いが異なる場合があります。

たとえば勤続35年なら、退職所得控除は「40万円×20年+70万円×15年=1,850万円」です。2,500万円の退職金なら、ここから1,850万円を引いた650万円が課税対象の元になり、その2分の1にあたる325万円に対して所得税・住民税がかかる、というイメージです(あくまで考え方の整理で、実額は他の所得や控除で変わります)。

この「2分の1課税」と「他の所得と分けて計算する」仕組みが、退職金一時金が「税で一番優遇された所得」と言われる理由です。

年金で受け取る場合の税金

退職金を年金形式で受け取ると、税法上は「雑所得(公的年金等)」として扱われます。詳しくは国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」を参照してください。

こちらは公的年金等控除という別の控除が使えます。65歳以上か未満か、他の所得がいくらあるかで控除額が変わる仕組みで、退職所得控除のような「勤続年数×単価」というシンプルな式ではありません。

雑所得は給与など他の所得と合算されて総合課税になります。つまり、現役で働いていたり、他の年金収入があったりすると、その分だけ所得が膨らみ、税率も上がりやすくなります。

一時金で受け取る
年金で受け取る
所得区分
退職所得(分離課税)
雑所得(総合課税)
使える控除
退職所得控除
公的年金等控除
課税対象
控除を引いた額の1/2
控除を引いた全額
受取時期
一括
複数年に分散
社会保険料への影響
原則として影響しにくい
所得が増えるため健康保険料に影響
運用の継続
受取後は自分で運用
会社や年金基金で予定利率がつく場合あり
制度設計は会社や年金規約で異なります。具体的な扱いは加入先の規約と税理士にご確認ください。

ここで見落としやすいのが、社会保険料です。退職してからの健康保険料(国民健康保険)や介護保険料は、その年の所得で計算されます。年金で受け取ると毎年所得が膨らむため、社会保険料の負担も上がりやすい。一時金は受取時こそ大きな金額ですが、受け取った後は所得から外れるため、翌年以降の社会保険料に乗りにくい。この差はキャッシュフローにおいて非常に大きくなります。

「2026年改正」で何が変わったか

2024年12月27日に閣議決定された令和7年度税制改正大綱で、退職所得控除の重複排除に関するルールが変わりました。

簡単に言うと、確定拠出年金(DC・iDeCo)の老齢一時金と会社の退職金を別々の年に受け取る場合、両方で退職所得控除を「フルに使う」には、間隔を空ける必要があるというルールがあります。

  • 退職金をに受け、その後にDC・iDeCo一時金 → 従来どおり「前年以前19年内」が論点になりやすい
  • DC・iDeCo一時金をに受け、その後に退職金 → 2026年1月1日以後は「前年以前4年内」から「前年以前9年内」に拡大

つまり、これまで「先にiDeCoを一時金でもらい、5年空けてから会社の退職金」という設計を考えていた人は、2026年以後は実質的に約10年の間隔を空けないと、退職金側の控除がフルには使えなくなる、というイメージです。

受け取り方を選ぶときの3つの問い

ここまでの数字だけ見ると「一時金が有利」に見えがちです。けれど、家計のリアルでは、税の最小化だけが正解ではありません。次の3つを自分の家計に当てはめて考えるのがいいと思います。

1. 退職時に大きな現金需要があるか

住宅ローンの完済、子の学費の最終支払い、住み替え。退職時にまとまった現金が必要なら、一時金の安心感は大きい。逆にそうした需要がなく、毎月の収入が必要なら年金形式の方が生活感覚に合います。

2. 他に年金収入がいくらあるか

公的年金、企業年金、配偶者の年金。年金収入が多いほど、退職金まで年金で受け取ると総合課税で税率が上がりやすくなります。一時金で別枠にした方が結果的に税負担が軽くなるケースが多い。

3. 退職金を自分で運用する自信があるか

一時金で受け取ったあとは、自分で運用するか預けるかを決める必要があります。会社の年金として残せば、規約上の予定利率がついて自動的に運用が続く場合があります。「運用は得意でない、複雑にしたくない」なら、年金形式の方が楽な側面もあります。

「とりあえず一時金」も「とりあえず年金」も危ない

最後にひとつだけ。会社の人事部や金融機関のパンフレットで「税が軽いから一時金が有利」と短く書かれていることがあります。一般論としては正しい場合が多いですが、個々の家計事情を反映していません。

逆に「年金で受け取れば長く安心」と勧められることもあります。これも、社会保険料負担と総合課税で家計のキャッシュフローを圧迫する可能性を見ていません。

退職金は人生で最大級の臨時収入です。受け取り方の決定は、税金、社会保険料、運用、家計支出、そして家族の状況をまとめて見る必要があります。少し面倒に思えても、一度きちんと並べて比較する価値があります。

投資判断は自己責任であり、本記事は個別商品や受取方法の推奨ではありません。

FAQ

退職金は一時金と年金、どちらの方が税金は軽いですか?

ケースによります。一般的には一時金の方が「退職所得控除」と「2分の1課税」で税が抑えやすい一方、年金形式は受取時期を分散できるメリットがあります。家計の支出計画と社会保険料の影響まで含めて比較する必要があります。

退職所得控除はいくら使えますか?

一般に勤続年数20年以下は1年あたり40万円、20年を超える部分は1年あたり70万円で計算されます。最低80万円が保証されます。詳細は国税庁公式情報を参照してください。

iDeCoを先に一時金で受け取れば節税になりますか?

2026年1月1日以後、DC・iDeCoの老齢一時金を先に受け取ったうえで退職金を後から受け取るケースでは、退職所得控除の重複排除調整が「前年以前9年内」に拡大されました。実質的に従来より調整期間が長くなる点に注意が必要です。

この記事は退職金の受け取り方を推奨するものですか?

違います。制度と税制の整理であり、個別の受取方法を推奨するものではありません。実際の判断は税理士など専門家にご相談ください。

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About the author
Toshi Time編集部

新NISA・米国株・配当戦略・FIRE思考を、制度と数字を軸に整理します。実務家・経営者の目線から、税制や社会保険料を考慮した客観的なシミュレーションを発信。※金融商品取引業の登録はなく、個別銘柄の推奨は行いません。

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