米国株・米国ETFの配当、手取りはいくらになるか——二重課税と外国税額控除
米国株・米国ETFの配当は米国源泉税10%と日本の20.315%で二重課税され、手取りは円換算でおよそ71.7%が目安です。外国税額控除で取り戻せる範囲と満額戻らない理由、NISA口座の扱い、為替の影響までシミュレーターと一緒に整理します。
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結論:手取りは「約71.7%」を基準に考える
米国株・米国ETFの配当は、受け取るまでに2つの国で課税されます。
- 米国側:日米租税条約により、一般の配当は**10%**が源泉徴収される
- 日本側:米国税を引いた残りの金額に対して、上場株式等の配当として20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)が源泉徴収される
計算過程はこうです。配当100に対して、
100 × (1 − 0.10) = 90 ← 米国源泉税10% 90 × (1 − 0.20315) = 71.7165 ← 日本の20.315%つまり、**確定申告をしなければ手取りは配当の約71.7%です。「米国株の配当利回り4%」は、税引後では円換算前でおよそ2.87%**まで下がる計算になります。
ここから確定申告で外国税額控除を使えば、米国で取られた10%分の一部または全部を取り戻せます。ただし後述のとおり控除限度額があり、誰でも満額戻るわけではありません。自分の条件でいくらになるかは、米国株・米国ETF 配当手取りシミュレーターで概算できます。
二重課税の構造を数字で見る
年間6,000ドルの配当(為替155円/USD)を例にすると、流れは次のとおりです。
| 段階 | 計算 | 金額(円) |
|---|---|---|
| 円換算の配当(税引前) | 6,000ドル × 155円 | 930,000 |
| 米国源泉税(10%) | 930,000 × 10% | ▲93,000 |
| 米国税引後 | 837,000 | |
| 国内課税(20.315%) | 837,000 × 20.315% | ▲170,037 |
| 手取り(外国税額控除なし) | 930,000 × 約71.7% | 666,963 |
ポイントは、日本の20.315%が米国税を引いた後の金額にかかることです。10% + 20.315% = 30.315%が引かれるのではなく、掛け算で計算されるため、合計の負担は**約28.3%**になります。それでも国内株式の20.315%と比べると、約8%ポイント重い構造です。
米国株の配当を家計のキャッシュフローとしてどう位置づけるかは、米国株配当生活を冷静に見る数字の話で詳しく書いています。
シミュレーターの使い方
米国株・米国ETF 配当手取りシミュレーターでは、次の条件を入力すると、特定口座の手取り・NISAの手取り・外国税額控除の目安・円換算配当が同時に表示されます。
- 年間ドル配当(USD)——保有ETF・個別株の年間分配金合計
- 為替(円/USD)——受取時の想定レート
- 米国源泉税率——一般の米国株・米国ETFは10%のまま
- 国内課税率——特定口座(源泉徴収あり)なら20.315%のまま
- 外国税額控除の限度率——米国税のうち何割まで控除枠に収まるかの想定(後述)
- 為替変動——円高・円安に振れた場合の感応度を見る
特定口座とNISAの手取りが並んで表示されるので、「二重課税+控除あり」と「米国10%のみ」の差がひと目で分かります。
外国税額控除でいくら戻るか
外国税額控除は、外国で納めた所得税相当額を日本の所得税から差し引いて二重課税を調整する制度です(国税庁 No.1240)。米国株の配当なら、源泉徴収された10%分がこの対象になります。
ただし、無条件に全額戻るわけではありません。控除できるのは次の控除限度額までです。
所得税の控除限度額 = その年分の所得税額 × (調整国外所得金額 ÷ 所得総額)つまり「その年にあなたが納める所得税のうち、国外所得に対応する割合まで」が上限です。ここから、満額戻らない典型的なケースが見えてきます。
- 所得税額そのものが小さい人——所得が低い、各種控除で所得税がほとんど出ていない場合、限度額も小さくなり、米国税10%を引ききれないことがあります
- 国外所得の比率が計算上小さくなる場合——限度額は所得全体に占める国外所得の割合で按分されます
所得税から控除しきれない分は、復興特別所得税からも同様の限度額の範囲で控除できます。さらに住民税側にも一定の控除の仕組みがあります。それでも引ききれない場合や、逆に限度額に余裕があった場合には、前後3年間の繰越制度が用意されています。
シミュレーターの「外国税額控除の限度率」は、この限度額の計算を簡略化したつまみです。正確な限度額は所得全体が分からないと計算できないため、「米国税が満額戻る想定」と「半分しか戻らない想定」を切り替えて幅で見る、という使い方を想定しています。
先ほどの例(配当93万円)でいえば、控除が満額使えると手取りは759,963円(約81.7%)、まったく使えなければ666,963円(約71.7%)。この約10%ポイントの幅のどこに自分が落ちるかが、外国税額控除の実際の価値です。
NISA口座では「米国10%だけ」取られる
NISA口座で米国株・米国ETFを保有する場合の扱いは、勘違いが多いポイントです。
| 項目 | 特定口座 | NISA口座 |
|---|---|---|
| 米国源泉税10% | 課税される | 課税される |
| 国内20.315% | 課税される | 非課税 |
| 外国税額控除 | 確定申告で使える | 使えない |
| 手取りの目安 | 約71.7%〜約81.7% | 約90% |
NISAの非課税は日本側の課税だけに効きます。米国側の10%は日米租税条約に基づく源泉徴収なので、NISAでも差し引かれます。そして、NISAの配当は国内で非課税=そもそも二重課税が生じていないため、外国税額控除の対象にもなりません。米国で取られた10%は取り戻す手段がないことになります。
とはいえ表のとおり、手取り率ではNISA(約90%)が特定口座(控除満額でも約81.7%)を上回ります。「10%取られっぱなし」はNISAで米国株を持たない理由にはなりませんが、国内資産の配当なら NISA で完全非課税なのに対し、米国株配当には非課税枠でも消えないコストが残る、という違いは知っておく価値があります。
円換算と為替の影響
配当はドルで支払われ、税額や手取りを円で考える以上、為替が手取りを直接動かします。
- 6,000ドルの配当は、155円なら93万円、140円なら84万円、170円なら102万円。**為替±10%は手取り±10%**とほぼ同義です
- 二重課税の「率」は為替と無関係に一定ですが、円建ての金額は受取時のレート次第で大きく振れます
- 確定申告では、配当や外国税額は原則として支払日のレートで円換算して計算します
シミュレーターの「為替変動」欄に−10%や+10%を入れると、税金の構造は同じでも円建て手取りがどれだけ動くかを確認できます。税率より為替の変動幅の方が大きい年も普通にある、というのが実感としてのポイントです。
注意点:この記事とシミュレーターの限界
- シミュレーターの控除限度率は簡略化した近似です。実際の控除限度額は、その年の所得税額と所得構成が確定しないと計算できません
- S&P500連動などの国内籍投資信託・東証ETFの分配金は、2020年1月から二重課税調整(分配時調整外国税相当額控除)が自動適用されるため、この記事のような自分での確定申告手続きは不要です。手続きが要るのは米国株・米国ETFを直接保有する場合です
- REITなど一部の米国資産では源泉税率が10%とならない場合があります。また、米国での租税条約上の取り扱いは証券会社経由の届出(W-8BEN等)が前提です
- 配当を確定申告すると、税額以外に社会保険料・扶養判定・各種給付の所得基準に波及する可能性があります。控除で戻る金額と副作用を並べて判断してください
まとめ:「戻るはず」ではなく「約71.7%」から積み上げる
米国株・米国ETFの配当手取りは、何もしなければ約71.7%。外国税額控除を申告すれば最大で約81.7%まで戻り、NISAなら約90%。この3つの水準を押さえておけば、利回り表示に引きずられずに手取りベースで計画が立てられます。
外国税額控除は「申告すれば全額戻る制度」ではなく、所得税額に比例した限度額までの調整制度です。自分の配当額と為替の想定を米国株・米国ETF 配当手取りシミュレーターに入れて、控除が満額使えた場合とゼロの場合の幅で見積もっておく——それが一番現実的な使い方だと考えられます。
なお、米国の連続増配銘柄としてよく話題になる「配当貴族」については、25年連続増配という条件や配当王との違いを配当貴族(S&P500 Dividend Aristocrats)とはで整理しています(特定銘柄の推奨ではなく、指数の仕組みの解説です)。
出典:国税庁 No.1240 居住者に係る外国税額控除/国税庁 No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度/財務省 日米租税条約のポイント/日本取引所グループ 証券税制・二重課税調整(外国税額控除)について/日本証券業協会 投資信託等の二重課税調整制度開始のご案内(PDF)
一次情報・参考リンク
- No.1240 居住者に係る外国税額控除:国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1240.htm
- No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度:国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1331.htm
- 日米租税条約のポイント:財務省 https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/tax_convention/press_release/sy151107_index.htm
- 証券税制・二重課税調整(外国税額控除)について:日本取引所グループ https://www.jpx.co.jp/equities/related/tax/index.html
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