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ローリング・ストーン『歴代最高のアルバム500』完全ガイド:2020年改訂で1位はマーヴィン・ゲイ、トップ20と傾向

米ローリング・ストーン誌が300名超のミュージシャン・批評家の投票で選んだ『歴代最高のアルバム500』2020年改訂版を、1位がマーヴィン・ゲイに交代した理由・集計方法・トップ20・全体の傾向・批判・日本での聴き方まで、わかりやすく解説します。

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結論:これは「いま業界人が選ぶ名盤の正典」

米音楽誌ローリング・ストーンが、300名を超えるミュージシャン・プロデューサー・批評家・音楽業界関係者の投票で選んだ「歴代最高のアルバム500(The 500 Greatest Albums of All Time)」の2020年改訂版を解説します。2020年9月22日に公開され、2003年の初版を17年ぶりに一から作り直したのが最大のポイントです。

栄えある新1位は、マーヴィン・ゲイ『ホワッツ・ゴーイング・オン』(1971年)。社会の混乱を歌った組曲的なソウルの名盤です。一方、2003年・2012年版で連続1位だったビートルズ『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』は、なんと24位まで下がりました。

押さえておきたいのは、これは「いちばん売れた」でも「いちばん有名」でもなく、作り手と評者が選んだリストだということです。だから順位は、その時々の音楽業界の価値観を映す鏡になります。2020年版は、ロック一辺倒だった旧版を見直し、ヒップホップ・女性・黒人アーティストを大きく増やした点で「多様化した」と評されました。正しい使い方は、順位を信じることではなく、「次に聴く名盤プレイリスト」のたたき台にすること、そして「何が上がり、何が落ちたか」から、いまの音楽の正典(カノン)の輪郭を読むことです。

どんなランキングか/集計方法

ローリング・ストーンは2020年、2003年の初版と2012年の改訂版を踏まえつつ、リストをゼロから作り直しました。

  • 300名超の音楽関係者(ミュージシャン、プロデューサー、批評家、ラジオ番組制作者、レーベル幹部など)に投票を依頼。
  • 各投票者は自分のベスト50アルバムを順位つきで提出。
  • それを点数化して集計し、500位までを決定。

投票者には、ビヨンセ、テイラー・スウィフト、ビリー・アイリッシュといった現役の人気アーティストから、U2やウータン・クランのメンバーまで、世代もジャンルも幅広い顔ぶれが含まれます。この「投票者の多様化」こそが、旧版からの大幅な順位変動を生んだ最大の要因です。

2020年版では、2003年・2012年のどちらにも載っていなかった完全新規のアルバムが154枚入り、うち86枚が21世紀(2000年以降)のリリースでした。ローリング・ストーン自身は「クラシックは今もクラシック。でも正典(カノン)はどんどん大きく、良くなっていく」とコメントしています。

なお、2023年12月にはビヨンセやバッド・バニー、テイラー・スウィフトの近作を反映する軽微な追補が行われており、公式サイトの現行リストは数値が一部更新されています。本記事は「17年ぶりの全面刷新」という出来事として、2020年改訂版を主に扱います。

トップ20

2020年改訂版のトップ20は以下の通りです(順位・作品・アーティスト・リリース年・一言)。

順位アルバムアーティスト一言
1ホワッツ・ゴーイング・オンマーヴィン・ゲイ1971社会派ソウルの金字塔。新1位
2ペット・サウンズザ・ビーチ・ボーイズ1966ポップ録音芸術の最高峰
3ブルージョニ・ミッチェル1971内省的SSWの到達点
4キー・オブ・ライフスティーヴィー・ワンダー1976二枚組の大作ソウル
5アビイ・ロードザ・ビートルズ1969最高位のビートルズ作
6ネヴァーマインドニルヴァーナ1991グランジ革命の象徴
7噂(ランアウト)フリートウッド・マック1977不和から生まれた名盤
8パープル・レインプリンス&ザ・レヴォリューション1984ファンク×ロックの傑作
9血の轍ボブ・ディラン1975別れを描いた円熟作
10ミスエデュケーションローリン・ヒル1998ネオソウルの金字塔
11リボルバーザ・ビートルズ1966スタジオ実験の幕開け
12スリラーマイケル・ジャクソン1982史上最も売れた名盤
13アイ・ネヴァー・ラヴド・ア・マン…アレサ・フランクリン1967ソウルの女王の出世作
14メイン・ストリートのならず者ザ・ローリング・ストーンズ1972二枚組のロック大作
15イット・テイクス・ア・ネイション…パブリック・エナミー1988政治的ヒップホップの頂点
16ロンドン・コーリングザ・クラッシュ1979パンクの枠を超えた傑作
17マイ・ビューティフル・ダーク…カニエ・ウェスト201021世紀ヒップホップの代表作
18追憶のハイウェイ61ボブ・ディラン1965フォークロック転換点
19トゥ・ピンプ・ア・バタフライケンドリック・ラマー2015現代ジャズラップの金字塔
20キッドAレディオヘッド2000電子音響への大転換

(邦題は一般的な表記。正式名は出典の英語タイトルを参照してください。)

全体の傾向

① 1位の交代が象徴する「脱ロック」

最大の変化は1位の交代です。ロックの記念碑だった『サージェント・ペパーズ』が24位まで下がり、代わりにソウルの『ホワッツ・ゴーイング・オン』が頂点に立ちました。トップ20を見ても、純然たるロックバンドの作品はビートルズ・ストーンズ・クラッシュ・ニルヴァーナ・レディオヘッドなどに限られ、ソウル/R&B・シンガーソングライター・ヒップホップが大きな存在感を持っています。

② ヒップホップの大幅増

ローリング・ストーンによれば、ラップ/ヒップホップのアルバムは旧版の約3倍に増えました。トップ20だけでも、パブリック・エナミー(15位)、カニエ・ウェスト(17位)、ケンドリック・ラマー(19位)、そしてヒップホップ色の濃いローリン・ヒル(10位)が並びます。

③ 女性・黒人アーティストの躍進

2020年版は「女性と有色人種のミュージシャンがより多く、より上位に入った」と評価されました。トップ20にはジョニ・ミッチェル(3位)、ローリン・ヒル(10位)、アレサ・フランクリン(13位)が入り、500位全体でもビヨンセ、ラナ・デル・レイ、ビリー・アイリッシュなど多くの女性アーティストが追加されています。

④ 21世紀のアルバムが大量参入

完全新規154枚のうち86枚が2000年以降の作品です。カニエ・ウェスト、ケンドリック・ラマー、レディオヘッド、さらに下位にはビリー・アイリッシュやラナ・デル・レイの近作も入り、「現代の名盤」を正典に取り込もうとする姿勢が明確です。

⑤ それでも「定番」は残る

一方で、ビートルズ・ディラン・ビーチ・ボーイズ・スティーヴィー・ワンダー・プリンス・マイケル・ジャクソンといった「鉄板」の名前はトップ20にしっかり残っています。古典を残しつつ、抜けていた声を足す――それが2020年改訂の基本姿勢でした。

主要作品の一覧(トップ20の聴きどころ)

全500作の順位は分量の関係でここには載せきれないため、全500位は本文末尾と出典欄のリンク先(公式リスト/Wikipedia)を参照してください。ここではトップ20の聴きどころを補足します。

  • 1位 マーヴィン・ゲイ『ホワッツ・ゴーイング・オン』 — ベトナム戦争や環境・貧困を歌ったソウルの組曲。「social album」の原点とされる。
  • 2位 ザ・ビーチ・ボーイズ『ペット・サウンズ』 — ブライアン・ウィルソンの作り込んだ録音芸術。ビートルズにも影響を与えた。
  • 3位 ジョニ・ミッチェル『ブルー』 — 失恋と旅を歌う内省的な傑作。女性SSWの到達点。
  • 4位 スティーヴィー・ワンダー『キー・オブ・ライフ』 — 二枚組の壮大なソウル/ファンク。
  • 5位 ザ・ビートルズ『アビイ・ロード』 — ビートルズ作で最高位。後半のメドレーが白眉。
  • 6位 ニルヴァーナ『ネヴァーマインド』 — グランジを世界に広げた一枚。
  • 7位 フリートウッド・マック『噂』 — メンバーの不和を昇華したポップロック。
  • 8位 プリンス&ザ・レヴォリューション『パープル・レイン』 — 映画と一体の名盤。
  • 9位 ボブ・ディラン『血の轍』 — 離別の痛みを描いた円熟期の傑作。
  • 10位 ローリン・ヒル『ミスエデュケーション』 — ネオソウルとヒップホップの金字塔。
  • 11位 ザ・ビートルズ『リボルバー』 / 18位『追憶のハイウェイ61』(ディラン) など、60年代の革新作も健在。
  • 17位 カニエ・ウェスト『マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー』 / 19位 ケンドリック・ラマー『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』 — 21世紀ヒップホップの代表として高評価。

文学の「正典」に興味がある人は、同じく専門家投票で作られたガーディアン『史上最高の小説100選』の解説もあわせてどうぞ。音楽と文学で、「いまの正典」がどう作られるかを比べると面白いはずです。

議論・批判

このランキングは公開直後から賛否両論を呼びました。

  • 古典の急落への驚き — 17年で1位から24位へ落ちた『サージェント・ペパーズ』のように、定番の大幅な順位変動に「変えすぎでは」という声が出ました。逆に「ローリング・ストーンが“クラシック・ロック博物館”から脱却した」と歓迎する見方もあります。
  • 近年作の評価が固まっていない — 2010年代・2020年前後の作品が上位に多数入ったことについて、「歴史的評価が定まる前のものを“歴代最高”に入れてよいのか」という近視眼(recency bias)批判があります。
  • 多様化は“表面的”か本質的か — 旧版(2003年)は500枚中に女性が約12組、有色人種の女性はゼロだったと指摘されており、改善は明らかです。一方で、批評家からは「投票者の好みを“偉大さ”と取り違えているだけで、根本の偏りは残る」との厳しい意見もあります。
  • 非英語圏・アジアの不在 — 依然として英米のアーティストが圧倒的で、非英語圏やアジアの音楽はほとんど入っていません。ラヴィ・シャンカルのような存在も「ビートルズへの影響」という文脈でしか語られない、といった批判があります。
  • そもそもランキング化は可能か — ジャンルも時代も異なるアルバムを一列に並べること自体への根源的な疑問も繰り返し提起されています。

要するに、このリストは「客観的な正解」ではなく、2020年時点の音楽業界の価値観のスナップショットとして読むのが妥当です。

日本の読者向け(聴き方・サブスク)

  • 日本のアーティストは未収録 — 2020年改訂版に日本のアーティストの単独アルバムは入っていません。英米のロック・ソウル・ヒップホップが中心です。
  • 大半はサブスクで聴ける — トップ20のアルバムは、Spotify・Apple Music・Amazon Musicなどの定額配信サービスで配信されており、日本からも問題なく聴けます。ランキングを開きながら、気になった順に流していくのが手軽です。
  • 「入口」としての使い方 — ソウルなら1位ゲイ→4位スティーヴィー・ワンダー→13位アレサ、ヒップホップなら15位パブリック・エナミー→17位カニエ→19位ケンドリック、というように、ジャンルごとに縦に聴いていくと、その分野の歴史がつかめます。
  • 公式リストは英語 — 全500作の順位やレビューはローリング・ストーン公式サイト(英語)にあります。アルバム名で検索すれば日本語の解説記事も多く見つかります。

まとめ:聴く名盤プレイリストとして使う

ローリング・ストーン「歴代最高のアルバム500」2020年改訂版は、いま業界人が選ぶ名盤の正典です。順位そのものに正解はありませんが、

  1. トップ20を“次に聴くプレイリスト”の起点にする
  2. 「1位が交代した」「ヒップホップが3倍に増えた」という変化から、音楽の価値観の移り変わりを読む
  3. 「誰が落ちたか(サージェント・ペパーズ等)」を考える

という三つの楽しみ方ができます。気になった1枚をサブスクで通して聴き、自分なりの「ベスト」を更新していく――そのきっかけとして、このリストはとても優秀です。


出典:Rolling Stone「The 500 Greatest Albums of All Time」(2020年9月22日公開の改訂版、公式リスト)、およびWikipedia「Rolling Stone’s 500 Greatest Albums of All Time」。順位・1位交代・集計方法・新規154枚/21世紀86枚・サージェント・ペパーズ24位はこれらで確認(2026年6月27日閲覧)。全500位の一覧は上記出典を参照してください。

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About the author
Toshi Time編集部

新NISA・iDeCo・配当・年金・退職金を、制度と税引後キャッシュフローの観点から整理します。社会保険料や取り崩し順序を含むシミュレーションを発信。※金融商品取引業の登録はなく、個別銘柄の推奨や投資助言は行いません。

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