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飲食店はなぜドリンクで儲けるのをやめられないのか

飲食店、特に居酒屋がドリンク粗利に頼る構造をめぐる議論を、店側、客側、席時間、価格表示、酒離れの観点から1枚で整理します。

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結論

「飲食店はなぜドリンクで儲けるのをやめられないのか」という議論は、店が正しいか、客がわがままか、という話にすると荒れます。

店側は、料理単品ではなく、席、接客、仕込み、家賃、滞在時間を含めた収益構造を見ています。

一方で客側は、「飲みたくない酒や高いソフトドリンクを頼む前提は不透明ではないか」「必要なら料理代や席料に明示してほしい」と感じています。

つまり、この議論の本質は、酒を頼むべきかではなく、席時間のコストをドリンク、料理、席料、時間制のどこに乗せるかです。

何が起きたか

はてな匿名ダイアリーに投稿された「なぜ飲食店は『ドリンクで儲ける』のをやめられないのか」という記事がXで拡散されました。

元記事は、居酒屋やバルのような長時間滞在型の飲食店では、料理よりもドリンクの粗利で席時間を回収する構造がある、と説明しています。

これに対して、「店の事情は理解できる」「酒を飲まない客も席を使う以上、一定の客単価は必要」という反応が出ました。

一方で、「経営の都合を客に押しつけるな」「飲まない客に肩身の狭さを感じさせるのは違う」「必要なら席料やチャージとして明示すべき」という反発もあります。

店側の見方

店側の論点は、単純な原価率ではありません。

居酒屋は、料理を出すだけの場所ではなく、一定時間その席を占有して会話や滞在を楽しむ場所です。客が2時間、3時間いるなら、その間の家賃、人件費、光熱費、洗い物、接客、仕込み、廃棄ロスをどこかで回収する必要があります。

ドリンクは、追加注文されやすく、提供も比較的速く、客単価を上げやすい商品です。だから、長時間滞在する業態では、ドリンク粗利が席時間のコスト回収装置になりやすい。

この立場から見ると、「飲まないなら料理だけ安く食べさせてほしい」という要求は、店の収益構造と噛み合いません。

客側の見方

一方で、客側の違和感も自然です。

飲まない人から見ると、酒を頼むことが前提の価格設計は見えにくい。飲みたくないものを頼まないと歓迎されない、ソフトドリンクが妙に高い、という体験は不公平に感じられます。

また、経営上必要なコストなら、料理価格、席料、サービス料、チャージ、時間制として明示してほしいという考え方もあります。

この立場から見ると、「飲まないなら来るな」と言われるのは、客の選択を狭める乱暴な言い方に聞こえます。

酒離れで前提が揺れている

この議論が大きくなる背景には、酒離れがあります。

国税庁の資料をもとにしたJTB総合研究所の整理では、成人1人当たりの年間酒類消費数量は1992年の101.8Lから2022年の75.4Lへ減少しています。

外食産業全体では、物価高や価格改定もあり売上や客単価は上がっています。日本フードサービス協会の2025年年間動向でも、外食売上は前年比107.3%、客単価は104.3%とされています。

ただし、売上が伸びていることと、居酒屋の旧来モデルがそのまま続くことは別です。酒を飲む人が減るほど、ドリンク粗利で席時間を回収する前提は弱くなります。

議論が噛み合っていない点

この議論は、店側と客側が見ている単位が違います。

店側は、席時間あたりの売上を見ています。1席が何時間使われ、その間にいくら粗利を生むかが重要です。

客側は、商品ごとの納得感を見ています。料理はいくら、ドリンクはいくら、席料はいくら、という見え方です。

どちらも間違いではありません。

しかし、店側が「席時間のコスト」を語り、客側が「商品価格の納得感」を語っている限り、反論は噛み合いません。

不毛な言い争いを止める問い

この話は、次の問いに分けると建設的になります。

  1. 店は席時間のコストを、ドリンク、料理、席料、時間制のどこで回収するのか
  2. 客は、その価格設計を入店前に理解できるのか
  3. 酒を飲まない客にも納得されるノンアル・料理・チャージ設計はあるのか
  4. 長時間滞在型の店と高回転型の店を、同じ飲食店として比べていないか
  5. 店は「来てほしい客」と「合わない客」をどう明示するのか

この問いに分けると、「飲め」「押しつけるな」「潰れろ」という言い合いから離れられます。

最終整理

飲食店がドリンクで儲けるのは、単に客から多く取るためではありません。

長く滞在する業態では、席時間のコストをどこかで回収しなければ店が続かないからです。

一方で、酒を飲まない客にとって、暗黙のドリンク前提はわかりにくく、不公平にも見えます。

だから必要なのは、どちらかを叩くことではありません。

席時間のコストを、ドリンクに乗せるのか、料理に乗せるのか、席料にするのか、時間制にするのか。

ここを明示できる店ほど、酒離れの時代でも客とのミスマッチを減らせるはずです。

参考情報

  • はてな匿名ダイアリー「なぜ飲食店は『ドリンクで儲ける』のをやめられないのか」
  • 日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査」
  • 国税庁「酒のしおり(令和7年7月)」
  • JTB総合研究所「成人1人当たりの年間酒類消費数量が30年で26.4L減少」
Primary sources

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About the author
Toshi Time編集部

新NISA・iDeCo・配当・年金・退職金を、制度と税引後キャッシュフローの観点から整理します。社会保険料や取り崩し順序を含むシミュレーションを発信。※金融商品取引業の登録はなく、個別銘柄の推奨や投資助言は行いません。

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