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BBC Cultureの名作小説ランキング徹底ガイド:英国小説1位『ミドルマーチ』、世界の物語1位『オデュッセイア』、源氏物語は34位

BBC Cultureが世界の批評家投票で出した複数の名作リスト(英国小説100・21世紀の小説12・世界を変えた物語100)を、集計方法・トップ10・全体の傾向・日本作品の扱い・邦訳事情まで一本で整理して解説します。

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結論:BBC Cultureの「名作ランキング」は1つではない

「BBC Cultureの名作小説ランキング」と一口に言っても、実体は複数のリストです。これを混同すると「1位はどれ?」で必ず食い違います。本記事で確認できたのは、主に次の3つです。

  • 英国小説ベスト100(2015年)……1位はジョージ・エリオット『ミドルマーチ』
  • 21世紀の小説ベスト12(2015年)……1位はジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』
  • 世界を変えた物語100(2018年)……1位はホメロス『オデュッセイア』

いずれも、BBC Cultureが世界中の批評家・作家に投票を募って集計したものです。共通しているのは「一般人気投票ではなく、評者が選んだリスト」だということ。だから1位も玄人好みの選択になりがちです。本記事では、どの年のどのリストかを区別しながら、トップ・傾向・日本作品の扱い・邦訳事情までまとめて整理します。小説系の関連企画として、英ガーディアンの『史上最高の小説100選』も合わせて読むと、いまの文学的「正典(カノン)」の輪郭が立体的に見えてきます。

どんなランキングか/集計方法

① 英国小説ベスト100(The 100 Greatest British Novels・2015年)

BBC Cultureの寄稿者**ジェーン・チャバタリ(Jane Ciabattari)**が企画し、英国外の批評家82名に投票を依頼しました。米国・欧州・アフリカ・アジア・オーストラリア・中東など世界中の書評家・編集者・文学研究者が対象で、英国の批評家はあえて1人も入れていないのが特徴です。「英国小説を、外から見たらどう見えるか」を狙った企画です。

各批評家が10作のランク付きリストを提出し、1位に10点……という配点で集計。全体では228作が候補に挙がり、上位100作が選ばれました。対象は英国人作家による小説のみ(戯曲・詩・短篇集・ノンフィクションは除外)。この「英国人限定」という条件のため、アイルランド出身のジェイムズ・ジョイスなどは対象外になっています。

② 21世紀の小説ベスト12(The 21st Century’s 12 Greatest Novels・2015年)

同じくチャバタリが、米国を中心とした批評家数十名(ニューヨーク・タイムズ・ブック・レビュー、タイム誌、カーカス・レビューなどの書評家)に、2000年1月以降に英語で発表された小説のベストを尋ねたものです。候補に挙がったのは156作で、得票上位12作がリスト化されました。2015年1月21日公開。なお同じ年・同じ企画者による①②は近い時期の姉妹企画です。

③ 世界を変えた物語100(The 100 Stories That Shaped the World・2018年)

3つの中で最も国際的なのがこれです。35カ国の作家・批評家・ジャーナリスト・研究者・翻訳者108名に、「人々の考え方を変えた、あるいは歴史に影響を与えた物語」を最大5つ挙げてもらい集計しました。2018年5月公開。投票者の内訳は欧州40%・北米30%・その他(アフリカ・アジア・南米・豪NZ)31%、**性別では女性が59%**と過半。対象は小説に限らず、叙事詩・戯曲・民話・児童書まで含む点が①②と大きく違います。

いずれも厳密な学術調査ではなく、主観の集合です。「最高(greatest)」「世界を変えた(shaped the world)」が何を指すかは投票者任せで、この種のランキング共通の限界として理解しておくとよいでしょう。

トップ20(英国小説ベスト100・2015年)

順位作品著者ひとこと
1ミドルマーチジョージ・エリオット地方都市の群像劇。「大人のための小説」の代名詞
2灯台へヴァージニア・ウルフ別荘の時間と戦争・歳月を描くモダニズムの傑作
3ダロウェイ夫人ヴァージニア・ウルフロンドンの一日と意識の流れ
4大いなる遺産チャールズ・ディケンズ孤児ピップの成長と思惑の交錯
5ジェーン・エアシャーロット・ブロンテ孤児の家庭教師の自立と愛
6荒涼館チャールズ・ディケンズ終わらぬ遺産訴訟をめぐる多視点の社会批判
7嵐が丘エミリー・ブロンテヒースクリフの破滅的な愛と復讐
8デイヴィッド・コパフィールドチャールズ・ディケンズ半自伝的な成長物語
9フランケンシュタインメアリー・シェリー創られた怪物と創造主の悲劇
10虚栄の市W・M・サッカレー出世欲のベッキーを軸にした風刺
11高慢と偏見ジェイン・オースティンエリザベスとダーシー、機知と誤解の恋愛喜劇
121984年ジョージ・オーウェル全体主義ディストピアの古典
13グッド・ソルジャーフォード・マドックス・フォード信頼できない語り手による不倫劇
14クラリッササミュエル・リチャードソン書簡体の大長篇
15贖罪(アトーンメント)イアン・マキューアン少女の嘘がもたらす一生の悔恨
16ヴァージニア・ウルフ6人の独白で編む実験的長篇
17ハワーズ・エンドE・M・フォースター二つの家族と「つなぐこと」の主題
18日の名残りカズオ・イシグロ老執事の回想と抑制された後悔
19エマジェイン・オースティンおせっかいな縁結びの喜劇
20説得ジェイン・オースティン別れた二人の再会、成熟した恋

1位『ミドルマーチ』は知名度こそ地味でも、専門家投票では昔から上位の常連です。トップ20を見ると、ウルフ・ディケンズ・オースティンが繰り返し顔を出すのがわかります。なお同企画では、カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』も34位に入っています。

全体の傾向

1. ウルフ・ディケンズ・オースティンの「三強」

「英国小説100」では、ヴァージニア・ウルフ、チャールズ・ディケンズ、ジェイン・オースティンが複数作で上位を占め、19世紀〜20世紀前半の英国正典の層の厚さが際立ちます。専門家が選ぶと、派手な娯楽性より「再読に耐える完成度」が評価される——という性格がよく出ています。

2. リストごとに「1位」がまったく違う

同じBBC Cultureでも、英国小説なら『ミドルマーチ』、21世紀の英語小説なら『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』、世界文学全体なら『オデュッセイア』。対象範囲が変われば1位も変わるのは当然で、「BBCの1位は◯◯」と一括りに語るのは危険です。

3. 「世界を変えた物語100」は国際性と古典が強い

2018年の「物語100」は、古代叙事詩から現代小説まで時代の幅が広く、英語以外の作品も多く入ります。投票者によれば原語の内訳は英語が約半数、フランス語が約9%、ロシア語・ドイツ語・スペイン語が各5%前後で、計33言語が登場。投票で名前が挙がった作家ではディケンズとシェイクスピアが各4作で最多でした。

4. それでも英語圏・西洋に重心

国際性が増した「物語100」でも、上位は依然として欧米の古典・近代作品が中心です。「最高」「世界を変えた」を名乗るわりに射程は西洋寄り、という批判はどのリストにも付きまといます。

主要作品の一覧(各リストのトップ)

全100位(全12位)はBBC Cultureの原記事や末尾リンク先の一覧で確認できます。ここでは各リストの上位を整理します。

21世紀の小説ベスト12(2015年・全12作)

  1. オスカー・ワオの短く凄まじい人生(ジュノ・ディアス)
  2. ノウン・ワールド(エドワード・P・ジョーンズ)
  3. ウルフ・ホール(ヒラリー・マンテル)
  4. ギレアド(マリリン・ロビンソン)
  5. コレクションズ(ジョナサン・フランゼン)
  6. カヴァリエ&クレイの驚くべき冒険(マイケル・シェイボン)
  7. ならずものがやってくる(ジェニファー・イーガン)
  8. ビリー・リンの永遠の一日(ベン・ファウンテン)
  9. 贖罪(イアン・マキューアン)
  10. 半分のぼった黄色い太陽(チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ)
  11. ホワイト・ティース(ゼイディー・スミス)
  12. ミドルセックス(ジェフリー・ユージェニデス)

ピュリッツァー賞・全米図書賞の受賞作が並ぶ、米批評家好みの顔ぶれです。

世界を変えた物語100(2018年・トップ10)

  1. オデュッセイア(ホメロス)
  2. アンクル・トムの小屋(ハリエット・ビーチャー・ストウ)
  3. フランケンシュタイン(メアリー・シェリー)
  4. 1984年(ジョージ・オーウェル)
  5. 崩れゆく絆(チヌア・アチェベ)
  6. 千夜一夜物語(作者多数)
  7. ドン・キホーテ(セルバンテス)
  8. ハムレット(シェイクスピア)
  9. 百年の孤独(ガブリエル・ガルシア=マルケス)
  10. イリアス(ホメロス)

1位『オデュッセイア』には「およそ5人に1人」の投票者が票を入れたと報じられています。小説に限らない「物語」のリストなので、戯曲(ハムレット)や叙事詩(イリアス)も上位に入っているのが特徴です。

議論・批判

最大の論点は、選考母集団の偏りです。「英国小説100」は意図的に英国外の批評家だけを集めましたが、それでも全体としては英語圏・欧米の評者が多数を占めます。「世界を変えた物語100」で国際性は増したものの、上位の顔ぶれは依然として欧米古典が中心で、「世界」を名乗るには射程が狭いという指摘が出ました。

また「英国人作家限定」という条件が、ジョイス『ユリシーズ』のような巨匠を機械的に除外してしまう点も、ルール上やむを得ないとはいえ違和感の対象になりました。一方で「21世紀の小説12」は投票者が米国の批評家に偏っており、英語で書かれた小説に限定されているため、非英語圏の現代文学(たとえばエレナ・フェランテなど)が原理的に入らない構造でした。

ランキングは「正解」ではなく、いまの正典が誰を中心に語られているかを映す鏡です。誰が入って誰が落ちたかを考えるほうが、順位そのものより面白い読み方です。

日本の読者向け:源氏物語は34位、村上春樹はゼロ

日本作品で確認できたのは、「世界を変えた物語100(2018年)」に紫式部『源氏物語』が34位で入っていることです。これがリスト中で唯一の日本作品で、「世界最古の長篇小説」のひとつとして国際的に評価されている裏づけといえます。

一方で、村上春樹は3つのリストのいずれにも入っていません。「英国小説100」は英国人作家限定、「21世紀の小説12」は英語で書かれた小説が条件で、いずれも対象外。「物語100」は世界文学が対象ですが、ここにも村上作品は選ばれませんでした。理由をBBCは明記しておらず、断定はできません。

なお「英国小説100」には、日本生まれのカズオ・イシグロが『日の名残り』(18位)と『わたしを離さないで』(34位)で2作入っています。ノーベル文学賞作家のイシグロは英国籍の作家なので、ここでは「英国小説」として扱われています。

邦訳事情としては、これらのリストの大半は文庫・全集で日本語訳が手に入ります。『源氏物語』はもちろん古典として多数の現代語訳がありますし、『オデュッセイア』『ドン・キホーテ』『百年の孤独』なども定番の邦訳があります。翻訳の著作権が切れた古典(フランケンシュタイン等)の旧訳は青空文庫で無料公開されているものもあります。現代の海外作品は翻訳に著作権が残るため、文庫などの邦訳で読む形になります。

まとめ:3つのリストを「次に読む本」のたたき台に

BBC Cultureの名作ランキングは1本ではなく、対象も年も1位も違う複数のリストです。読むときのコツは、

  • 英国小説の話」なら『ミドルマーチ』を起点に、ウルフ・ディケンズ・オースティンへ。
  • 現代(21世紀)の英語小説」を試したいなら、ディアス『オスカー・ワオ』やマンテル『ウルフ・ホール』から。
  • 世界文学の幹」を押さえたいなら、『オデュッセイア』『ドン・キホーテ』『源氏物語』など「物語100」を地図に。

という具合に、目的に合わせて使い分けることです。順位を信じるより、「自分はどれを読んだか/次にどれを読むか」のチェックリストとして使うのが、この種のリストのいちばん健全な楽しみ方です。小説の正典をもっと広く眺めたい人は、ガーディアン『史上最高の小説100選』の解説も合わせてどうぞ。


出典:本記事はBBC Cultureの複数のリスト——「The 100 Greatest British Novels」(2015年、1位『ミドルマーチ』)、「The 21st Century’s 12 Greatest Novels」(2015年1月21日、1位『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』)、「The 100 Stories That Shaped the World」(2018年5月、1位『オデュッセイア』、源氏物語34位)——に基づきます。順位・集計方法・収録作は、BBC英国小説100のトップ20一覧(ibrowsebooks)BBC 21世紀の小説の順位解説(Bustle, 2015-01-21)BBC 世界を変えた物語100の一覧(Goodreads)、および同リストの順位・集計詳細(adgully, 2018-05-26)で確認しました(最終確認:2026年6月27日)。各リストの全項目はBBC Cultureの原記事および上記一覧でご確認ください。

Primary sources

一次情報・参考リンク

About the author
Toshi Time編集部

新NISA・iDeCo・配当・年金・退職金を、制度と税引後キャッシュフローの観点から整理します。社会保険料や取り崩し順序を含むシミュレーションを発信。※金融商品取引業の登録はなく、個別銘柄の推奨や投資助言は行いません。

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