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日本のEV充電遅れは6.6kV配電網のせいなのか

日本のEV急速充電インフラをめぐる6.6kV配電網論争を、韓国22.9kV比較、受変電設備、系統接続、高出力化、投資不足の観点から1枚で整理します。

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結論

日本のEV急速充電インフラが遅い理由として、「日本の配電網は6.6kVで弱く、韓国の22.9kVに比べて不利だ」という議論が広がっています。

この話は、雑に否定も肯定もできません。

配電電圧が高ければ、同じ電力を送るときの電流を小さくできるため、配電線側の損失、電圧降下、供給余力の面で有利になり得ます。高出力の急速充電器を複数置く場所では、系統側の余力は重要です。

一方で、「6.6kVだから巨大トランスが必要で、22.9kVなら小さく済む」と単純には言えません。需要家側の変圧器や受変電設備は、電圧だけでなく容量、絶縁、保護、離隔、安全管理、保守で決まります。高電圧化すれば設備が常に軽く安くなるわけではありません。

この議論の本質は、日本の6.6kVが悪いか、韓国の22.9kVが正しいかではなく、高出力充電を置ける系統・用地・投資設計をどう作るかです。

何が起きたか

SNS上で、日本のEV急速充電器の設置が進みにくい背景として、日本の高圧配電が6.6kV中心であることを問題視する投稿が広がりました。

主張の要点は、6.6kV配電から大電力を取ろうとすると、専用トランスや受変電設備、周辺工事が大きくなり、充電器の設置場所探しやコストに響くというものです。比較対象として、韓国の22.9kV配電が挙げられました。

一方で、反論も出ています。変圧器の大きさは受電電圧だけでなく容量で決まる。高電圧にすれば需要家側の絶縁や保護設備、安全管理が重くなる。6.6kVだけを原因にするのは短絡的だ、という反論です。

まず確認できる事実から分けます。

東京電力パワーグリッドは、配電用変電所で電柱にかかっている電線で使用される電圧の6,600Vまで下げて、需要家へ届けると説明しています。経済産業省の電気設備技術基準解説でも、戦後に6,000V級配電が広く行われるようになった経緯が示されています。

韓国側については、KEPCOの送・配電用電気設備利用規定で、特別高圧の韓電系統連系として交流三相22,900Vが示されています。したがって、「韓国に22.9kVという比較軸がある」こと自体は確認できます。

ただし、それだけで「韓国の方がEV急速充電器を安く小さく置ける」とまでは言えません。

6.6kV原因説の見方

6.6kV原因説が見ているのは、配電線側の制約です。

電力は、単純化すれば電圧と電流で運ばれます。同じ電力を送るなら、電圧が高いほど電流を小さくできます。電流が小さくなれば、電線の損失や電圧降下を抑えやすくなります。

これは、高出力の急速充電器を考えると重要です。

経済産業省の「充電インフラ整備促進に向けた指針」では、2030年までに充電器30万口、公共用急速充電器3万口を目指すとされています。さらに急速充電については、高速道路では90kW以上、150kWも設置し、高速道路以外でも50kW以上を目安に、平均出力を40kWから80kWへ倍増させる方向が示されています。

50kW、90kW、150kWの充電器を1台置くだけならまだしも、複数台を同時に動かす充電拠点では、受電容量と配電線側の余力が効きます。トラック、バス、高速道路SA/PA、物流拠点では、単なるコンセント増設とは桁が違います。

この意味で、「配電網の能力がEV充電インフラの制約になる」という指摘には筋があります。

反論側の見方

反論側が見ているのは、需要家側の受変電設備です。

たとえば、同じ出力の急速充電設備を置くなら、必要な変圧器容量は基本的にkVAで決まります。受電電圧が6.6kVか22.9kVかだけで、同じ容量の設備が魔法のように小さくなるわけではありません。

むしろ高い電圧を扱うほど、絶縁、開閉器、保護協調、離隔、接地、安全管理、保守の要求は重くなります。経済産業省の電気設備技術基準解説でも、高圧・特別高圧機器について、接触危険の防止、接地、絶縁、火災防止などの考え方が示されています。

つまり、高電圧化は系統側の電流を減らすメリットがある一方で、需要家側設備の安全・保守コストを増やす面もあります。

ここを無視して「韓国は22.9kVだから小さい設備で済む」と言うと、技術的には粗くなります。

議論が噛み合っていない点

この論争が噛み合わない理由は、見ている場所が違うからです。

6.6kV原因説は、配電線側を見ています。大電力を遠くまで、複数拠点へ、同時に供給するなら、電圧が高い方が有利になり得るという話です。

反論側は、需要家側を見ています。充電器、変圧器、キュービクル、保護装置、用地、保守を考えれば、受電電圧だけで設備サイズやコストは決まらないという話です。

どちらも一部は正しい。

しかし、どちらか一方だけを見ても、EV充電インフラの遅れは説明できません。

EV充電インフラで本当に詰まりやすいのは、次のような複合問題です。

  1. 既存の受電設備に余力があるか
  2. 高出力充電器を何台、同時に稼働させるのか
  3. 追加の高圧受電設備や特別高圧受電が必要か
  4. その設備を置く用地があるか
  5. 低稼働率の場所に投資して採算が合うか
  6. ピーク時の電力負荷を蓄電池やエネマネで平準化できるか
  7. 電力会社との系統接続、工事負担、工期をどう短くするか

つまり、6.6kVは論点の一部ですが、唯一の原因ではありません。

不毛な言い争いを止める問い

この話は、次の問いに分けると建設的になります。

  1. 充電拠点ごとに必要なのは50kW級なのか、90kW級なのか、150kW以上なのか
  2. 既存6.6kV配電網で足りる場所と、上位系統への接続が必要な場所をどう分けるのか
  3. 特別高圧化する方がよい拠点は、高速道路、物流拠点、バス営業所、どこなのか
  4. 用地、キュービクル、保守、主任技術者、工事負担を誰が持つのか
  5. 蓄電池併設や充電時間制御で、系統増強をどこまで避けられるのか
  6. 補助金は口数を増やすために使うのか、総出力と稼働率を上げるために使うのか

経産省の指針も、単に口数だけではなく、総出力数を現在の10倍にすること、高出力化、費用対効果の高い案件の優先、エネルギーマネジメントによる負荷平準化を掲げています。

これは、EV充電インフラが「充電器を置けば終わり」ではないことを示しています。

最終整理

日本のEV充電インフラ遅れを、6.6kV配電網だけのせいにするのは乱暴です。

ただし、配電網が論点でないわけでもありません。高出力充電器を多数置くには、系統容量、電圧降下、工事負担、受電設備、用地、保守が効きます。6.6kV中心の既存配電網を前提にすると、場所によっては増強や上位系統接続が必要になります。

一方で、韓国の22.9kVを見て「高電圧なら全部解決」と見るのも危険です。高電圧化には、安全・絶縁・保護・保守のコストが伴います。

今回の論点は、6.6kVか22.9kVかの勝敗ではありません。

どの場所は既存6.6kVで増強し、どの場所は特別高圧で受け、どの場所は蓄電池やエネマネでピークを逃がすのか。

自分の学びとしては、ここです。

EV充電インフラは、自動車の話に見えて、実際には電力インフラ、用地、投資回収、保安、系統運用の話です。

参考情報

  • 経済産業省「充電インフラ整備促進に関する取組」
  • 経済産業省「充電インフラ整備促進に向けた指針」
  • 経済産業省 EVグリッドWG「EVグリッドWGキックオフにあたって」
  • 東京電力パワーグリッド「送電線」
  • 経済産業省「電気設備に関する技術基準を定める省令の解説」
  • KEPCO「送・配電用電気設備利用規定」
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Toshi Time編集部

新NISA・iDeCo・配当・年金・退職金を、制度と税引後キャッシュフローの観点から整理します。社会保険料や取り崩し順序を含むシミュレーションを発信。※金融商品取引業の登録はなく、個別銘柄の推奨や投資助言は行いません。

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